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ミスチル地蔵と奈々様

アニソン界の覇権を握ったまま長いが、そのボーカルスタイルはアニメ声とは程遠い。当初から、声優ではなく本格的な歌手を志していた背景からして後続とは一線を画している。

『STARTING NOW!』はストイックでハードなロックサウンドがかっこいい。
水樹奈々の十八番といえるこのスタイル。無論、歌唱技術には余裕しか感じない。
ハードロック出自のヘヴィーな楽器隊とポップなボーカルの対比は、Judy and Maryを彷彿とさせるけど、良い意味でのそのギャップは彼ら以上だろう。


コールアンドレスポンスを意識したサビ。
青空とエアプレーンのスポーティーなPV。バンド感。
どんな曲をやってもトータルの演出クオリティがブレないのは本人の実力以上のチームの強さを感じる。

音楽に全く詳しくないのに、昔から水樹奈々のCDだけはからなず発売日に買っている友人がいる。
きっとこの国には彼のようなファンが沢山いるのだと思う。
思えば、良いバンドも得てしてそういうものだ。サマーソニックにMr.Childrenが出演したとき、他バンドの出演時間からステージの最前列に陣取り、その上演奏中のバンドに全く関心を示さない「ミスチル地蔵」が話題になった。

良き音楽ファンにだけ愛されるアーティストは、圧倒的多数の心をつかめない。
多くの、音楽好きが陥る罠だ。発言力のある玄人に目配せしすぎて魅力の干からびたアーティスト崩れは、スターの後ろに屍のように積み重なっている。

水樹奈々は、Mr.Children同様、規格外の求心力を持ち、非音楽ファンの心に音楽ではなく自分自身の居場所をつくることを選んだ、本物の音楽家なのだと思う。

水樹奈々楽曲のバリエーションはもちろんハードロックサウンドだけではない。
シンセサウンドのテクノポップや、民族調の世界観など得意分野の振り幅もなかなかである。
近年見直されつつある、エンターテイメントショーとしてのライブ力も、国内トップアイドルのそれに比肩すると個人的には思っている。

良いアーティストを聴く楽しみは、キャリアを通して聴くことにある。
成長、変化、拡散、取捨選択、拡大、縮小、天然、作為、試行錯誤。音楽性の変遷はひとつなぎの物語であり、音楽史の縮図だ。その意味で、水樹奈々のキャリアを一気通貫で遊ぶのは、音楽リスナーとしてとても恵まれた成長ができる。
加えて、水樹奈々のキャリアにはアニメ、ゲーム界への橋渡しもあるわけで、件の友人が人生をかけて水樹奈々を中心とした世界に満たされている理由に私はとても納得できる。良い音楽は青春時代のBGMではない。ライフワークとしての器があるのだ。私は彼が心底羨ましい。

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written by bluemonday

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