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カオティックとインテリジェンス

カオティックという言葉がある。
その言葉の選ばれ方において、カオティックと、カオスは全く別物である。

カオスは字義通り混沌の意味。
ジャンルレスであったり、特にそれが無秩序な印象につながっていたりすると人は、カオスな曲だ、と表現する。
他方、カオティックはむしろ秩序だ。
具体的には、スクリーモ、あるいはスクリーモ系のエモハードコア、メタルコア、ミクスチャーロックなどを主戦場とするバンド達の、様式的で完成度高くセットアップされた変拍子や展開、音のキャラクターを褒める際に使われる。

そう。
本格ミステリは様式美だ。と言った小説家がいたが、同じようにカオティックも様式美である。
スクリームがあり、ノイジーなパートがあり、メロウなパートがある。
自己の内面に向き合った退廃的、破滅的な世界観。そして変拍子に転調、と音楽理論や演奏力をフルに発揮する。


『自意識不明』も上記の様式美を満たした、実力派のカオティックソングだ。
ツインペダルとメロディアスかつノイジーなリフの怒涛のスピード感。
歌詞に魂をこめた切迫感のあるパンキッシュなスクリーム。
ギターがクリーントーンになるメロウなパートも美しい。
こんなときこそドラムは突っ張って捻ったパターンを叩く。
そして歌詞。言葉でメッセージを表現することへの強い拘り。
カオティックであるということは実力派ということなのだ。
完全無欠であること。それは負の意味でのカオスの対極にある。


nervous light of sundayほど本格的ではないが、同じようにカオティックなハードコアバンドの七弦ギタリストを努めていた友人がいた。
彼は東京の高校を中退し、たくさんのバイトを経験しながらバンドでのデビューを目指していた。
私のように学校では良い子で通ってた人種からすると、悪い友達も多そうな彼は、いわゆる不良っぽいところがあったが、音楽に対してストイックに追求するその様子には、姿勢の違いをひしひしと感じた。
単にがむしゃらに夢を追うのではなく、彼には技術、知識への貪欲な向上心があり、事実それを身につけていた。
ハードコアだけでなく、本当に多様なジャンルの音楽を聴き、映画やアニメにも詳しく、ピアノも弾けたようだ。

彼には、とび職から転身したと言われるバンド『FACT』のキャリアにグッとくるような一面があった。それこそが彼の本質だと思う。
しかし、持ち前のヤンキー気質で音楽のインテリジェンスに迫るその生き様には、同じ音楽好きとして考えさせられるものがあった。

nervous light of sundayは大田区の大森出身のようだ。
件の友人も東京だった。

実は、彼がその後どうなったのかはわからない。
『自意識不明』のスピーディーで艶やかなギターリフや、練られた楽曲構成に唸るとき、私は彼のことを思い出す。
そしてこのシーンの層の厚さに、新たなヒーローの誕生を想像する。

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