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日本人による日本人のコスプレ

「日本語ロック」という言葉がある。
はっぴいえんどが開拓を進め、サザンオールスターズ、RCサクセション、ブルーハーツが各々の方法論で完成させたソレだ。

その言葉はいまでは廃れ、代わりに若い音楽ファンに親しまれているのは「邦楽ロック」だ。

日本でロックをやること。かつては、それ自体が事件であり挑戦だった。
いまはどうか。幸福なことに日本でロックは可能であることが証明されたと思う。それが「邦楽ロック」というビッグワードに象徴されている。

それは日本国内での話。
世界的な視点で見ると状況は変わる。ブリティッシュロック、アメリカンロックのような世界共通の認知は、邦楽ロックにおいてはゼロに等しい。
ひとえに言語の問題もある。
しかし目を留めたいのは、世界中の誰から見てもブリティッシュロックが確かにイギリスっぽく、アメリカンロックが確かにアメリカっぽいという事実だ。邦楽ロックは日本っぽいだろうか。その日本っぽさは世界的にポピュラーな日本のイメージだろうか。本当の邦楽ロックというやつは、まだ長い眠りの中にあるのだと私は考えたい。

「ASIAN KUNG-FU GENERATION」「人間椅子」はわざわざ日本でロックをやることに強い自覚を持っているアーティストだと思っている。「BABYMETAL」「和楽器バンド」はどのくらい意識的だったかわからないが結果的に強い自覚をいま持っているアーティストだ。

簡単に言えば、世界の周縁としての日本、という自覚だ。
アメリカ人がブリティッシュロックをやるとき、その音には「なぜ?あえてイギリス風なのか?」という問いへのアンサーが自然に表象されるものだ。逆も然り。それは自国のロックを他国のロックと相対して見れる視点に起因する。世界では当たり前にできていることだが、日本は島国だからか、それをとても苦手とする。
「ASIAN KUNG-FU GENERATION」「人間椅子」「BABYMETAL」「和楽器バンド」はそれができる人たちだ。

その中でもポピュラリティでは最も劣る人間椅子に、私はひときわ強烈な客観性を感じる。そこには日本でロックやることが本質的に縮小再生産であることへの恐れがある。クールな理解がある。私はそれこそが本当の邦楽ロックの開花に必要だと思っている。


歌詞だけではない。人間椅子は国文学の世界観がしっかり音やルックスに連結している。和装で、国産のメロディを歌う。ノエル・ギャラガーはユニオンジャックのシェラトンを弾き、スティービー・レイ・ヴォーンはカウボーイハットをかぶる。そういうことだ。

日本という国のアイデンティティは少し格好悪い。サムライ、ちょんまげ、アニメ、満員電車、村社会。少なくとも欧米的ロックのフィーリングに一度でも憧れた人が、あえて取り組もうとはしないテーマだ。しかし、それと向き合った人間椅子がひとつの完成形に到達していることを知るべきだ。「恐怖の大王」はテンポチェンジしてからのギターソロが異常に格好良くてぶったまげる。なぜぶったまげるって、私たちの知るいつもの洋楽ハードロックとなにか違う匂いが鼻先を掠めるからだ。そしてその違いとレガシーとも言えるハードロックサウンドは見事に溶け合っている。

なにが違うのだろう。
それは日本的哀愁ではないだろうか。先述の歌詞とメロディだけでなく、リズムの溜めやボーカルの発声にもそれは持ち寄られている。人間椅子はハードロックサウンドに文芸の世界観を乗せているのではない。日本的哀愁の世界観からロックが発露しているのだ。ロックは狂気の音楽だ。そして狂気は目的ではなく結果だ。出自は個人の心の奥底であり、そういう意味で国民性や文化に強く依存する。キング・クリムゾンの狂気の起源を日本人は当然持ち合わせていない。ヨーロッパに哀愁があるように、日本にも哀愁がある。その日本的哀愁の風景が突破されたときの狂気が、恐怖の大王のギターソロなのだ。

人間椅子が実現しているのは、コンセプトロックと言えるかもしれない。日本人による日本人のコスプレ。まさにその屈折すらも日本独特の狂気と言える。日本でロックをやるのに、日本をコンセプトにするのは皮肉なことかもしれない。自然でいること自体が困難なら、徹底してその宿命を背負ったバンドこそがこの国のロックをつくってくれる。

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