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しゅっとこどっこいバンドじゃないもん!

鈴姫みさこは侮れない。

鈴木美早子は侮れない。
明るく愛嬌があって、媚びないけど隙があって壁がない。
ロックバンドの紅一点として、バンドを壊さないままメンバーをモチベートし躍進させるために生まれてきたかのような女性だと思う。

その意味ではみさこは本質的にアイドルではないかもしれない。
アイドルは一般的に、媚びるけど、隙がなくて、壁があるからだ。

そのみさこがバンドじゃないもん!をはじめたとき、私はまた彼女のことがわからなくなった。出来過ぎのような紅一点の適正は、天性のものではなく、コントロールする余地のあるものだったのか。ひとまず結論付けた、私にとってのみさこのキャラクターは、まだまだ洞察の足りないものだった。

鈴姫みさこは侮れない。
バンドじゃないもん!は、ひょっとしたら、ゲスの極み乙女よりもよっぽどゲスなサブプロジェクトかもしれない、と今になって思っている。もちろんこれは褒め言葉だ。


『しゅっとこどっこい』を聴いた印象をひとことで言うと、全盛期のモーニング娘。だった。
共通して描かれているのは、ハチャメチャ感だ。ハチャメチャ感は、スムーズさを意図的に無視した落差のある曲展開や、過剰なセリフ、合いの手、シュールな単語のリフレインなどにある。ハチャメチャ感を演出する理由は、ひとえにハッピーなテンションそのものが曲のメッセージであるからだ。

モーニング娘。は二十世紀から二十一世紀への結節点での、トップアイドルだった。
『恋愛レボリューション21』にハチャメチャ感は顕著である。不景気と言われながら日本中がそれを楽観視していた時代の空気を忠実に掬い上げている。ハッピーなテンションが最大級であることを表現するためにつんく♂は、歌詞でハジけるだけでなく、サウンドと歌唱を過剰に、ハチャメチャにした。それはまさに時代との真っ向勝負であり、結果としてつんく♂はアイドル天下統一時代を築き上げた。

他方、いまはアイドル戦国時代と言われ、アイドルたちの楽曲も多様化を極めている。そんな中、『しゅっとこどっこい』に代表されるバンもん!のハチャメチャ感に、私はオールディーズへの憧憬にも似た懐かしさを感じた。唐突に挿入されるラップ、曲名を連呼するだけのリフ、ランドセルのようにツルピカなディストーションギター、PVの最後にお決まりのように挿入されるディレクターの「カット!」という声などに、久しく見なかったセンスを感じた。21世紀が真新しかった頃のそれだ。

そのような作風になった要因として挙げられるのが、みさこやメンバー、作曲者であるゆよゆっぺが、モーニング娘。の時代に育った世代であること、そしてバンドじゃないもん!がベタなアイドルではなく、アイドルそのものへのパロディ的メタ視点を抱えたアーティストであるということである。

例えば、バンもん公式のメンバープロフィールは過剰なアイドルっぽさで溢れている。
みさこの公式な年齢は「精神年齢13歳」であり、血液型は「黒足アヒル型」。望月みゆの年齢は「1こした」、大桃子サンライズの出身地は「プレアデス星団」だ。

モーニング娘。の全盛期と同時代、小倉優子というアイドルが、こりん星からきたというキャラ設定で活躍していた。それがユーモアであると受け入れられつつも、ときに本人が窮屈さを感じているように見えたのとは対象的な軽やかさと余裕がバンもんにはある。バンもんにとってアイドルは、自分自身であると同時にパロディの対象でもあるからだ。

そう考えるとやはり、鈴木美早子は侮れない。
媚びないのか媚びるのか分からないし、隙があるのかないのかも分からない、壁がないのかあるのかもわからない。ただ明るく愛嬌があることは確かである。ひょっとしたらそれこそが音楽で人を楽しませるための決定的な才能なのだろうか。
彼女が、天才的な紅一点という私の断定に収まらずにいてしまったことが恐ろしく、悔しく、しかしそれは必然だったのだろう。考えてみれば鈴木美早子その人自身がミクストメディアを地で行っていたのである。

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