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スポーティパーティウルフルズ

最高の花瓶とボーカリスト俳優説

つくづくバンドはボーカルが持っていくのだなと思う。
このバンド。年季の入った本格ファンクサウンドなのに、トータス松本に華がありすぎて損してる。

リフレインする"スポーティパーティ"のバックトラックのリフを聴いて欲しい。
なんてダーティーなんだろう。
単体でも成立するほどに太く、確実に前進する立体的なドラム。
そのドラム戦車をこれまたごんぶとの手綱で後ろにひっぱってしまうベース。
その両方に火炎放射を浴びせて焚き付けるようにのたうち回るギター。

バックトラックだけを聴けば、ビジュアルイメージさえも、ウルフルズのパブリックイメージとは違う、ダーティーで硬派なルックスが浮かび上がってくるはずだ。

バンドにとって、ボーカルが花だとすれば、楽器隊はさしずめ花瓶である。仮に花を取り外して、花瓶としての美しさ、かっこよさ、丈夫さを評価してみれば、世のバンド界隈には、いまと全く違った素敵な世界が広がっているかもしれない。ウルフルケイスケ、ジョン・B、サンコンJr.がつくる模様のないタイトな花瓶は、そんな可能性を妄想させてくれる。

さて、そんな最高の花瓶に生けられているにも関わらず、すべてを持っていってしまうトータス松本には何があるのか。

ひとつ提案したいのは、ボーカリスト俳優説だ。
古今東西、ロックバンドのボーカリストが、一定のキャリアを積んだ上で俳優業を掛け持つ例が後を絶たない。トータス松本も然り。無論、楽器隊より人気が出やすいこと、ソングライターであれば俳優業にも通じるクリエイティビティを潜在する場合が多いことなどの条件もあるが、そもそもボーカルとは喋るパフォーマーであることを忘れてはならない。つまるところ、技術的にボーカルと俳優は近似しているのだ。

トータス松本は、喋るパフォーマーとしての俳優力が高い。
演劇の世界では、小道具大道具を用意せず、あえて喋りのみで情景描写や世界観を表現するスタイルが一般的に存在する。それは演技の持つ可能性を最大限に楽しめる、まさに演劇の真骨頂だ。その空間では、言葉とアクションだけで場のすべてを持っていく使命が俳優に課されている。

ある種のボーカリストの持つ驚異的な空間掌握力はその使命の達成に近い。
声が良い。顔が派手。しなやかな身体。個別の要素を挙げればいくらでも褒められる。しかし、俳優が観客に情景を見せるために注ぎ込まれるエネルギーは、決して個別の要素の能力値では測れない。
文字通り前身をフルに駆使する。セリフのピッチは勿論のこと、瞬きひとつ繊細に研ぎ澄まされた、総合芸術だ。

ボーカリストは総合芸術である。そしてトータス松本は歌のうまい花ではなく、最高の花瓶に刺さった最高の俳優だ。"スポーティパーティ"のリフレインと対になるBメロの、アドリブのように不定形で切迫したボーカルワークを聴けばその怪演に胸を打たれずにはいられない。

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