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さよならスカイラインラッキーオールドサン

あなたにとっての懐メロではなく

圧倒的に聴きやすいのに圧倒的に独自性に満ちている。


あなたが古き良き温かい時代に生まれずに、絶望ばかりのこんな時代に生きていることを恨んでいるのなら、

あるいは、

失われた青春時代の自分から、今の自分はどうしてここまでかけ離れてしまったのかと嘆いているのなら、


あなたが聴くべき音楽は、
あなたにとっての懐メロではなく、
ラッキーオールドサンだ。


ラッキーオールドサンを聴けば、
この世のすべての過去は、
いま目の前のこの現実こそが、
セピア色で、
温かく、
愛おしさに溢れたレトロな世界へと、
断続的に変わっていったものだったのだと、
知ることができる。



ある意味、このバンドは非常にテクニカルだと思っている。
月島雫が大人になったような、唱歌のようなナナの歌声も、どこまでもクリーンにこだわり抜かれた篠原良彰の美学的なギターも、カーステレオ、木綿のハンカチーフ、十三回忌の母、といった言葉選びも、サングラス、ホテル・カリフォルニア、追憶のハイウェイ61、A LONG VACATION、カッタウェイの無いエレキギターといったMVの小道具も、ある雰囲気を表現するための意匠として申し分なさすぎて怖いくらいだ。ここまでアジャストされた意匠を取り揃えたセンスに、ラッキーオールドサンの、演出家としての、高等なテクニックを感じざるを得ない。


ところで、ラッキーオールドサンは、優しいだけの音楽だろうか。癒されるだけの音楽だろうか。現状をただ肯定するだけの音楽だろうか。前向きに生活へと向き合うためのサプリメントのような音楽だろうか。私は、それは違うと思っている。

ラッキーオールドサンは確かに、三丁目の夕日的な直線的な癒やしのノスタルジーとして消費されてしまう可能性を常にはらんでいる。また、批判的に捉えたい人は、そのように誤解すれば、たやすく批判できてしまう。その種のガードの弱さが、ラッキーオールドサンにはある。上述の無数のレガシーな意匠たちこそ、批判されるとき、槍玉に挙げられてしまうだろう。

しかし、その意匠たちはあくまでテクニカルな産物である。私が思うに、ラッキーオールドサンの本質は別のところにある。彼らの本質は、ライブハウスではなく、カフェや飲食店と併設されたイベントスペースでのパフォーマンスを頻繁に行っているところに隠れている。

どういうことか。
次のことを再確認したい。
ライブハウスは音楽が必要とされている空間ではないということだ。

例えば、飲食店は音楽を必要とする。なぜなら私たちは気分良く食事をしたいし、店主は私たちが気分良く食事することを望んでいるからだ。バーは音楽を必要とする。私たちは気分良くお酒を楽しみたいし、マスターは私たちがバーでお酒を片手に最高のひとときを過ごすことを望んでいるからだ。大半の飲食店はBGMを流す。そして、特別な居心地を提供したい飲食店は、音楽家を招き、生演奏を披露する。

立ち戻ろう。ライブハウスは、音楽が必要でないのに、わざわざ音楽を鳴らしにいく場所である。コンサートの日になると演奏家と聴衆が一斉にからっぽのライブハウスに集結する。そこに初めから音楽を待っている人はいない。


結論に行こう。要するに、ラッキーオールドサンは、音楽が必要とされている場所に、音楽を届けることを生業としている。必要としていない人に自分の音楽をなんとか聴いてもらい、ライブハウスに来てもらうのではなく、必要としている人のもとにフワリと音楽を置きにいく。それは音楽の慣性に倣った音楽との関わり方である。
二人は意識的に選んでいるわけではないかもしれない。しかし、この差異はとても重要なことだ。
音楽の慣性に倣うことで自ずと、つくる曲も、演奏も変わってくる。ラッキーオールドサンのオーガニックな音楽性は、音楽の慣性への、身体的、精神的な適応がもたらしたものである。

音楽の慣性との付き合い方については、また別の場所で掘り下げる価値があると思っている。ラッキーオールドサンの活動スタイルは、その際の問題提起として起票するに値する批評的なものだ。

最後に、
MVでスカイラインを運転している男性がいい味を出している。
この曲をシングルカットするなら、CDジャケットはタバコに火をつける彼の横顔で決まりではないだろうか。

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written by bluemonday

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旅行とビールが好きなゆとり世代

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