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恋人ができたんだMy Hair is Bad

SNS時代のラブソング

若々しい。イマドキの若者感、イマドキの恋愛感をどストレートに感じ取れる曲だ。

大衆文化は世相を反映する。とくに音楽はそうだ。
では、どんな大衆音楽が、世相を感じ取るのに向いている音楽なのだろうか。
メッセージ性のある社会派ロックだろうか。海外の最先端を捉えたヒップホップだろうか。インテリジェンスのあるシティポップだろうか。DIYなインディーパンクだろうか。

私は、若者が書いたラブソングだと思う。
恋愛は普遍的だ。
だからこそ、その切り取り方に時代が見え隠れする。


例えばSHISHAMOの『君とフェス』。夏フェスが社交の場として定着した今だからこそ歌になるラブソングだ。昔ならそれはビーチだったかもしれないし、映画館だったかもしれないし、ディスコだったかもしれない。


My Hair is Badの『恋人ができたんだ』は、男性目線の歌だ。
新しい恋人ができたことで、以前の恋人を思い出す歌。

いかにも女々しく、色恋が世界のすべてでいられる年頃の青臭さを感じる。
私自身が個人的に共感できるかと言えば、正直Noだ。
大人の男になってしまった青年はもう、過去の恋愛をこれほどまでにウェットに振り返れない。美化こそすれど。

過去に対してウェットになれるのは若者の特権だ。それは、過去を感傷の対象ではなく、情熱の対象として見ることができている証拠である。なぜそれができるかと言えば、若者はそもそも抱えている過去の絶対量が少なく(故に過去自体に神秘性があり)、その上過去といえども精々、二三年前程度のものだからだ。

『恋人ができたんだ』において同時代性を感じるために、もうひとつのポイントに着目する。別れた後の恋人、という概念の新しい解釈だ。

いまの若者の恋愛の主戦場は間違いなく、LINE、Twitter、Instagram、FaceBookなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)である。SNSの本質はアーカイブ性と、公共性だ。結論から言えば、別れた恋人と連絡をとろうとしなくても、SNSを覗けば、元カレ・元カノのその後が見えてしまう。

SNSは恋愛に新しい観点を持ち込む。自分を振った元カレがまだ自分をフォローしているのを知った上で、あえて落ち込んで見せることもあるだろう。逆に、他の男なんていくらでもいることを見てほしくて、遊んでいることを匂わせた写真をいつも以上にアップロードするかもしれない。切り替えたことを知ってほしくて、アイコンを変えることもあるだろう。シェアした音楽を深読みしてしまうかもしれない。沈黙することすらひとつのメッセージになってしまう。

SNSは、別れた後の恋人たちをアーカイブし続けることで、恋愛に対して新しい角度でスポットライトを当ててしまった。『恋人ができたんだ』はこの時代に生まれた、そんな新しい恋愛の機微を切り取った、同時代性のあるラブソングである。

この歌が椎木知仁の実体験にもとづいているかどうかは分からない。いやおそらくそうではないだろう。なぜならあまりにリアルだからだ。

リアルで写実的な描写を持ち込んだ理由は、生活感を持ち込みたかったからだ。別れた恋人を想う歌、という平凡なテーマを、現代の若者の当たり前の生活感で描けば、それが新奇性のあるラブソングになる。椎木知仁はそんな風にして、平凡なテーマを新しいラブソングに仕上げるソングライターなのだと思う。

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written by bluemonday

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