アイドルとSF
ウィリアム・ギブスン!
近代的なダンスビートと、キッチュなメロディラインは、そのタイトルに相応しいSF的高揚感に満ちている。
"ありふれた感情の墓場って
全くこんな感じだって"
クールに怪しく激走するイントロからのハスキーな歌い出しがむちゃくちゃ格好良い。
ワンコーラス終わった後、自由に展開しはじめる主旋律も、曲の混沌を深め、いい具合にリスナーを迷わせる。
工場?を舞台に撮影されたMVは、コンセプチュアルで美しい。
金髪とパステルカラーのロリータ衣装は、もはやサブカルアイドルの意匠である。
この世界観は、いわゆる、地下アイドルで無ければ出せない。
やはり清楚であっては良くないし、黒髪であっては良くない。
シンガーソングライターやバンドがやっても、エゴイスティックになってしまい、ポップにならない。
エゴイスティックになってしまい、ポップにならない。
エゴを廃し、ポップにする。そう、アイドルの役割はここにあるのだと思う。
インタビュー系音楽雑誌をかすめる程度に読めば分かるが、この国の音楽は創りての人生のストーリーに創作物を引きつけすぎである。曰く、「このシングルは、もう後ろを振り返らないで音楽を続けてくぞ、といううちらの決意です。あえて前向きな歌詞をつくりました」「長いトンネルの中にいました。この曲ができることで次に進めるようになった気がします。大切な曲です」「過去の自分達を乗り越えるためにはこのアルバムをつくることが必要でした」
私が聴きたいのは音楽であり、あなたの自伝を彩るBGMじゃないことに気づいて欲しい。
アイドルには、その生臭さがないから良い。良い曲は良いし、楽しい曲は楽しい。作詞作曲者がどんな苦難を乗り越えてどんな人生を歩んでようが、アイドルに曲を提供した時点で、それはただの音に変わる。
私たちはただの音が聴きたい。
そういう意味で、アイドルの役割は、エゴを廃し、ポップにすることなのだ。
アイドルに癒やされるという声をよく聞くが、考えてみればそれは必ずしも天使のようなルックスや、愛くるしいキャラクターに癒やされているのではないのだと思う。
何より、エゴの付きまとう現実世界と自分自身に、時として、薬品のようにクリアに成分調整されたアイドルは染みるのだ。
それはとても人工的な癒やしだ。電子ビート、そして『ニューロマンサー』が証明した、SFとの愛称の良さは、アイドルのそんな特質とも関係するのかもしれない。
( Written Nov 29, 2016 )
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