ZeroBeat自分でみつける音楽のためのWEBメディア

恥と洗練と同業者

曽我部恵一は紛れもないミュージシャンズミュージシャンズだ。先輩後輩問わず他のバンドマンや評論家に、曽我部恵一という人間はあまりに讃えられている。愛されすぎて逆に胡散臭いくらいだ。

同業者に愛されるにはいくつか理由がある。人柄もそうだろう。しかしそれよりも鍵になるのは、同じプロであってもなかなかマネできない、マネしようとしない音楽をやっていることだ。

他のミュージシャンに出来なくて、曽我部恵一にできる音楽ってなんだろうか。そのキーワードは、恥ずかしさ、だと私は思っている。

恥ずかしい音楽にはいくつかある。プライベートな歌詞だったり、不器用で必死な歌声であったり、古臭い曲調だったり、子供っぽいソフトな曲調だったり、粗削りな演奏だったり。

恥ずかしいことを人はやらない。恥ずかしいからだ。しかし、こと芸術となってくると、必ずしもそうは問屋がおろさなくなってくる。なぜなら、人間はひとの恥ずかしい一面というやつに心を動かされてしまう生き物だからだ。親友の打ち明け話。気になる人の普段は見せない表情。汗を流して働く人。体を張った芸人のコント。旅の恥はかき捨てと言うけれど、恥をかきたくなければ冒険をしなければ良い。人はなるべき恥をかかずに生きていく。しかし何かしらの表現を志し人の心を動かしたければ、表現のカッコよさを磨くだけでなく個々のできる範囲で、恥をかいていく必要がある。

プライベートな歌詞だったり、不器用で必死な歌声であったり、古臭い曲調だったり、子供っぽいソフトな曲調だったり、粗削りな演奏だったり。

曽我部恵一が讃えられるのは他のミュージシャンたちが、半ば反射的に隠してしまうこれらの恥を自然体のまま、聴ける音楽に昇華してしまうからだ。もちろんそれらを実現するには技術もいる。作曲、編曲、ボーカル、演奏で高度なバランス感覚を持ち、さじ加減を知る耳を持っている必要がある。とはいえ、生き様に裏付けられた彼の人間性がなにより、生身の恥ずかしさを、聴ける、ものとして存在させる。

曽我部恵一の顔が村上春樹に似ていると思うのは私だけだろうか。エッセイやインタビューを読むと、村上春樹は村上春樹の小説の主人公のような生き方を本当にしていることがわかる。曽我部恵一も曽我部恵一の楽曲の主人公のような生き方を本当にしているからこそ、恥と表現が美しく繋がっているのだと思う。

『セツナ』はいい曲過ぎる。アコギの鳴るミディアムでメロウな良曲は彼に多いが、それにしてもこの透明感は稀有だ。メロディは二パターンを機械的に繰り返す。シンプルな構成。コーラスでコンプがかったボーカルや淡々としたピアノも相まってドライな印象に拍車をかける。


"夕暮れの街切り取ってピンクの呪文かける魔女たちの季節"


しかし、言葉数の多い色気のあるメロディとちょっと"ピンク"でドキッとする歌詞にはむくむくとしたエネルギーが内包されていて、微熱のまま夢の中に誘うような強引さも備えた曲になっている。

タワーレコードのインストアライブでこの曲を演奏している映像を見た。ベースの田中貴と二人編成のサニーデイ・サービスで、バリバリに歪ませたストラトキャスターを抱えて曽我部恵一はこの曲を絶叫していた。スタジオ音源の『セツナ』の洗練に抗うようだった。違和感が無かったことは驚きではない。表現を変えても取り払えない、曽我部恵一の、聴ける、恥があるからこそだと思う。

MVのヒロインは廣田朋菜という方だそう。映像部隊が優秀なのだろう。彼らの映像コンテンツはいつも良い。だけど今回は特に良い。
( Written Dec 28, 2016 )

この曲をバトンタッチするTwitterアカウントを入力して、この曲をヘッダーで紹介しましょう。
@

Written by 管理人

https://twitter.com/ZeroBeat_BOT

管理人。旅とビールが好きなゆとり世代

邦楽ロックタグの関連楽曲

  • Good New Times

    Gotch

    バンドマンのソロを聴くのは好きだ。 その人が、バンドとソロ、公と私をどのように分断するのか。 その境目をどの地点に置くか。音なのか、歌詞なのか。仕事と趣味なのか。 一番好きなジャンルと、二番目に好きなジャンルなのか。 それまでのバンド作品では、プライベートな音楽を鳴らしていたのか。 そうではなかったのか。 ソロ作品をリリースするとたくさんのことが見えてくる。 『Good

  • BLINKSTONEの真実を

    BIGMAMA

    金井政人は非常にモチベーションの高い人間である。そして理想の高い人間である。 無理もない。この人は持てる者だ。 まず普通に顔が格好良い。 そして学がある。ポイントは最終学歴ではなく、付属高校から中央大学に進学していることだ。東京出身。私立の高校に進学できるだけの経済的余裕と、文化資本を備えた、いわゆる中流家庭の出身であると推察できる。 BIGMAMAの優美でクラシカルな世界観は

  • 猫とアレルギー

    きのこ帝国

    猫である。そしてきのこである。テレキャスである。 ある種の人間はそれだけで何かに気づく。 あ、これ好きなヤツだ。と。 中堅監督が駆け出しの頃、地味な俳優陣と低予算なロケでとったモノローグの多い邦画。 きのこ帝国の持つ叙情性と、それへの親近感を言葉にするとき私はそれを思い浮かべた。 『猫とアレルギー』は、理性的でしっとりとしたロックバラードだ。 Aメロからいい具合に抑揚がきいたメ

  • ランアンドラン

    KANA-BOON

    若手正統派ロックバンドの大本命としてここ数年認知されているが、その原型は言われるほど「正統派」では無かった気がする。百歩譲ってイケメンでないことは置いておくとしても、谷口鮪の声には独特のねちっこさがあったし、楽曲もポップではあるが日本人好みの泣きメロは比較的少なかった。古賀隼斗のギターはまあまあ主張が強かったし。2013年のサマソニを見た時点で、ロックバンドらしさは抜群だったが、大衆の心を掴むなら

  • ハッピーエンド

    back number

    Mr.Children、コブクロ。 わかる。わかるよ、清水依与吏。 back numberが先達から非常に強い影響を受けているのがわかる。 いや、影響という言い方は間違っているかもしれない。 それは、遺伝に近い。 ハッピーエンドは、ドラマティックなバラードである。 他のback numberのバラードと同じように。 日本人好みのメロディライン、切ない恋心の歌詞。 ストリング

  • 人間ビデオ

    ドレスコーズ

    偉大なバンドは磁場をつくる。 多くのリスナーを惹きつけるためだけの磁場ではない。簡単に言えば、フォロワーを生むということだ。 多くの場合、フォロワーバンドというやつは幾つかの類型に分けることができる。 最も一般的なのが、単なるマネだ。そこにオトナのマーケティングがある。この感じがウケる。ロジカルシンキングに長けた企業人は、スピーディーにトレンドをキャッチし、商品に反映させることができる。

  • Swan

    [Alexandros]

    なんでこんなに顔がかっこいいのか、という疑問に対して誰も何も答えてくれないバンドナンバーワン。 曲もかっこいい。電子ビートとフェイザー?感のある揺らしたボーカルによる淡々とした始まりからして、新参者のパブリックイメージの外側から攻めてくる。この感触はどこから引っ張ってきたアイデアなのか。ボーカルの録音とミックスが良いだけなのか。 ドラマティックなサビで泣かせるまでに至らず、すぐAメロに

インディーロックタグの関連楽曲

  • ラバーソウル

    GRAND FAMILY ORCHESTRA

    太っちょのドラマーがいるバンドってもうそれだけで雰囲気良いよね。 太っちょのキャッチャーがいる野球部みたいなもんでさ。 ダンサンブルでアッパーな流行りのロックかと思いきや、スパイスのような哀愁が良い曲。 コーラスはどこかヨーロピアンでレトロ。あえて、ミクスチャーロックのタグをつけさせてもらった。 構成は意外とシンプルかつ挑戦的。『リンダリンダ』の如きロンド形式。冒頭のリフレイン

  • 恐怖の大王

    人間椅子

    「日本語ロック」という言葉がある。 はっぴいえんどが開拓を進め、サザンオールスターズ、RCサクセション、ブルーハーツが各々の方法論で完成させたソレだ。 その言葉はいまでは廃れ、代わりに若い音楽ファンに親しまれているのは「邦楽ロック」だ。 日本でロックをやること。かつては、それ自体が事件であり挑戦だった。 いまはどうか。幸福なことに日本でロックは可能であることが証明されたと思う。それ

  • 自意識不明

    nervous light of sunday

    カオティックという言葉がある。 その言葉の選ばれ方において、カオティックと、カオスは全く別物である。 カオスは字義通り混沌の意味。 ジャンルレスであったり、特にそれが無秩序な印象につながっていたりすると人は、カオスな曲だ、と表現する。 他方、カオティックはむしろ秩序だ。 具体的には、スクリーモ、あるいはスクリーモ系のエモ、ハードコア、メタルコア、ミクスチャーロックなどを主戦場とするバ

  • めぐり逢えたら

    おとぎ話

    古い家具のようなギターの音色でドリーミーなアルペジオを組み立てる。 最後まで厚くならない音像に、盛り上がりに欠ける空虚なメロディが滑っていく。 独特な音楽は多々あれど、その独特さのベクトルにおいて有識者が認知できないような角度で『めぐり逢えたら』を繰り出すおとぎ話は、損極まりない。 新しいジャンルとの融合や、時代のアーキテクチャの有効活用は本当のところオリジナルでもなんでもない。進んでいる時

  • STAY YOUNG

    THE SENSATIONS

    インターネット上の「次はこのバンドがくる!」なんて記事はすべて面白くない。バラエティ番組では、面白い発言にテロップがつくのではなくテロップをつけることでそれが面白いことであると決まっていくように、若手バンドのフィーチャー記事の背後を辿れば、そのバンドが既に選ばれているという事実にブチ当たる。 次のバンドとして選ばれたバンドは、永久機関になったビリヤードのように玉突きと補充の対象になる。

  • カガミヨカガミ

    トライアンパサンディ

    ヘビーでポップでオルタナティヴ。曲が良い。トライアンパサンディの楽曲は粒ぞろいだ。それもそのはず、ボーカルのG-YUNcoSANDYは、GOLLBETTYとしてトイズファクトリーから若くしてメジャーデビューしている。 トライアンパサンディは、巷によくある、かわいくて格好良いバンドではないようだ。『カガミヨカガミ』での出だしのビターな歌メロのリフレイン、主張しすぎないギターリフ、声へのエフェク

  • ANOTHER STARTING LINE

    Hi-STANDARD

    メロコアと言われる音楽が持つポップ感ってわりと様式美的なものがあって、どんなにメロディックであろうと刺さらない人には全く刺さらなかったりする。かく言う私も、メロコアを聴くときは、「あーメロコアのメロコア感気持ち良いー」的なチャネルが活性化されている状態に無意識に合わせているもので、言うなればそれは一種の敷居だったりする。 『ANOTHER STARTING LINE』がスゴく良かったのは、メ

フォークタグの関連楽曲

  • 夢見る人

    さだまさし

    ドラマ主題歌として書き下ろしの曲。 線の細いフォーク歌手であった往年のイメージからすると、出だしから、重厚なストリングスとピアノの光沢にいささか面食らう。 AKB48の指原莉乃が自身の誕生日にディナーショーを開催して話題になった。さすがの彼女も当日はドレスアップしており、日本歌謡史のスタンダードナンバーを中心に据えたセットリストはディナーショーに相応しい、フォーマルな仕上がりだったようだ。

  • 生きていたんだよな

    あいみょん

    あいみょんは、影のある少年のような声をしている。あいみょんの最大の個性は、ハイパフォーマンスなこの声にある。尖った強いエゴや、その奥で守られている心の震えを、言葉を乗せずとも伝えてしまう蒼い声だ。 アコースティックギターのストロークよりもスピーディーに畳み掛けるメロディは、声の次に独特だ。野狐禅の竹原ピストルに似ていると指摘されているが正しいと思う。フォークの流儀だ。声質も相まってすこぶる気

  • さよならスカイライン

    ラッキーオールドサン

    圧倒的に聴きやすいのに圧倒的に独自性に満ちている。 あなたが古き良き温かい時代に生まれずに、絶望ばかりのこんな時代に生きていることを恨んでいるのなら、 あるいは、 失われた青春時代の自分から、今の自分はどうしてここまでかけ離れてしまったのかと嘆いているのなら、 あなたが聴くべき音楽は、 あなたにとっての懐メロではなく、 ラッキーオールドサンだ。 ラッキ

サブカルタグの関連楽曲

  • ニューロマンサー

    おやすみホログラム

    ウィリアム・ギブスン! 近代的なダンスビートと、キッチュなメロディラインは、そのタイトルに相応しいSF的高揚感に満ちている。 "ありふれた感情の墓場って 全くこんな感じだって" クールに怪しく激走するイントロからのハスキーな歌い出しがむちゃくちゃ格好良い。 ワンコーラス終わった後、自由に展開しはじめる主旋律も、曲の混沌を深め、いい具合にリスナーを迷わせる。 工場?を舞台に撮

  • すなっちゃん・なっぽー

    BELLRING少女ハート

    キャッチーで甘いメロディ。切ないディストーションギター。 それをところどころで、破壊する楽曲構成がすごい。 なんと途中で急にジャズになってしまう。 そのジャズは、取ってつけたような感があるんだけど、取ってつけたような感こそが面白く思えるのはなぜだろう。 結局どこがサビなのかわからなかった。 舌っ足らずなユニゾンが醸し出す素人感。 最後は咳き込んで終わる。 『すなっちゃん・なっぽー

  • Summer Soul

    cero

    上質だ。これぞ真の音楽好きが真の音楽好きに自信をもってレコメンドできる最高に上質でソフィスティケートされたジャンル越境ポップロックミュージックだ。 ベースが良い。 超聴こえる。 ベースを聴かせるバンドは大抵良いバンドだ。 ドラムが良い。 タムで刻み、金物をキーボードのように聴かせるバンドは大抵良いバンドだ。 テクニカルなのに、編曲に嫌味がない。 こういうのをズルいと言う。

  • 猫とアレルギー

    きのこ帝国

    猫である。そしてきのこである。テレキャスである。 ある種の人間はそれだけで何かに気づく。 あ、これ好きなヤツだ。と。 中堅監督が駆け出しの頃、地味な俳優陣と低予算なロケでとったモノローグの多い邦画。 きのこ帝国の持つ叙情性と、それへの親近感を言葉にするとき私はそれを思い浮かべた。 『猫とアレルギー』は、理性的でしっとりとしたロックバラードだ。 Aメロからいい具合に抑揚がきいたメ

line_banner
DANCE TO YOU
DANCE TO YOU
posted with amazlet at 16.12.28
サニーデイ・サービス
ROSE RECORDS (2016-08-03)
売り上げランキング: 2,114
東京
東京
posted with amazlet at 16.12.28
サニーデイ・サービス
ミディ (2016-05-18)
売り上げランキング: 107,817
×
  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @suZume1179

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @OrLo1455

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @yutono8823

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @umechan25

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @massa_kim

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @togemaru2006

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @spacegrinder

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @harasu_onigiri

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @bon_lab

  • RT @kawa_wa_wa: サニーデイ・サービス『セツナ』MV『刹那の粘』6年前の今日撮影しました👚 https://t.co/WoMO7M340m https://t.co/B1d6s5TLS0 by @SamonTheBiggest